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続・わたくしの宝もの 6_積立と上京と


昭和7年の修学旅行の話を続けます。

東京でのある1日は、両国で安田さんの庭園を見て、浅草の観音さままで歩きました。

松屋でお土産物も買いました。

当時は観光バスなんてないでしょう。見物は全部徒歩。

袴姿だったから、とっても疲れたのを覚えています。

信濃の善光寺さんでは、もちろん中に入ったわよ。真ーっ暗なの。

前を歩くお友だちの袴につかまって、そろーり、そろり進んでね。

修学旅行といえども、たいそうな旅だったわね。

女学校に入ってから、確かひと月あたり650円ずつ積み立てて、それを4年間。

今のお金でどれくらいかしら。

旅行のあとだったか前だったか、わたくしが保母になりたいと先生に申し上げたら、

北陸の学校だと北陸のお免状しかもらえなくて、

東京だったら全国で通用するお免状をもらえるから、

可能ならば出してもらいなさいと言われたの。

7人きょうだいだからお前だけ優遇できないと言われたのに頭を下げて許してもらってね。

積立のことも、上京のことも、

両親には心から感謝しなくちゃならないと思っています。

《前をゆく 袴を頼りに 善光寺》

薫風香る良い季節になりましたね

H28.05.23号より


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