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続・わたくしの宝もの 10_前途を祝して
前回の水泳デビューのお話でお伝え忘れたことがあったの。
いつものようにプールで泳いでいたある日、なんと元横綱の千代の富士さんがいらしたのよ。遠目で見ていたら、こちらに近づいていらして、「僕と同じ体格ですね」っておっしゃったの。
千代の富士さん、相当立派なお姿だったのに同じ体格って、
まあ、腑に落ちないこともなくはなかったけれど、名誉なことと前向きに受け取ったわ。
有名人自慢になっちゃうけれど、ちょっと言っておきたかったの、ごめんなさいね。
さて、気を取り直して、今回はわたくしの結婚式のことを聞いて頂こうかと思います。
確か25歳ぐらいだったかと思うの。昔のことだから正確には忘れちゃったわね。
当時は戦争中で、わたくしと主人は中国に渡っていたから、
主人の上司に仲人をお願いして、レストランで簡素な式を挙げてもらいました。
場所が中国でしょう。両親はもとより親戚もいなかったのだけれど、
さびしいとか、そういう気持ちはなかったの。
戦時中だから知らぬ間に自制していたのかもしれないわね。
白無垢や色打掛なんて贅沢なものはないから、衣装はツーピース。
戦々恐々とした中だったから、指輪の交換もなくて皆さまにお披露目したという感じね。
君が代を歌って、届けを出して晴れて夫婦になりました。
情勢を考えれば浮かれている場合じゃないけれど、やっぱり嬉しかったわよ。若かったんだもの。
そう、今回のコラムで結婚式を取り上げたのは、わたくしの孫が先日、式を挙げたからなんです。本当におめでとう。お似合いの二人です。
どうぞ末永くお幸せにね。
《嬉しさ隠して 晴れ姿はツーピース》

若いっていいわね
H28.07.25号より