続・わたくしの宝もの 23_慌てた海外送金
今年最後のコラムは、恒例の失敗談で締めようかしら。
だいぶ前、娘の敦子がツアーを組んでお客様をドイツにお連れしたときのおはなしよ。
体調が優れなかったのかしらね。
渡航先のドイツで娘が具合を悪くして病院に入院することになったの。
日本でその連絡を受けたわたくしは心配でたまらなくなったけれど、病院の支払いが足りないというじゃない。すぐにお金を送ってほしいと言われたの。
すわ、一大事。
どうしようかと考えぬいて、ある場所へ向かうことにしました。
その場所とは、日本橋の日本銀行です。
送金となれば日本銀行しかないと思いこんでいました。何の疑問もなかったわ。
目の前について、扉を押したら開いちゃったの。
天井も高いし、柱も太いし、もうびっくり。それも真っ暗なのよ。
誰もいないし、おっかないところだなあと思いながら突っ立っていたら、守衛さんが怪訝な顔をして近づいてきてね、「何かご用ですか?」って声をかけて下さったの。
女がひとり、こそーっと入ってきたんだもの。あちらのほうがびっくりしたわよね。
ここへ来た事情を説明したら「ここではできません」と言われて。
後から聞いたら、日本銀行は銀行の銀行だから、送金業務なんてものはやっていないんだそうね。
結局、ツアーの代理店の方が教えて下さって、街の銀行から無事、送金できました。
銀行という名で営業しているものだから、しかも国の名前がついていて、
おおもとだとも思ったから、海外を相手にするにはここしかないと思ったの。
何にも知らないということは恐ろしいけれど、果敢に立ち向かう勇気を与えてくれます。そんな失敗ばなし。
年の瀬を締めくくるテーマとして相応しかったかは疑問だけれど。
では皆皆さま、良いお年をお迎えください。
《女ひとり おっかなびっくり 日本銀行》

とある忘年会で自慢の喉を披露しました。
曲目は十八番の「北国の春」です
H28.12.19号より