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続・わたくしの宝もの 31_憧れの二等車
前回は、グリーンの袴をはいたお友達二人組の話をしたのよね。
ついでだから保母学校の話を続けます。
同級生には樺太、台湾、朝鮮から入学された方もいたのよ。
メソジスト教会を代表して来ていらしたの。
宗教的な布教はなくて、ただお勉強にいらしていて。
故郷に帰ってあちらで幼稚園を開いたと風の便りで聞きました。
樺太から来ていたお二人は、夏休みは帰省されていたけれど、冬休みは帰れなくてね。とっても遠いから冬休みのように短い期間だと難しいのね。
お正月を東京で過ごすしかなくて、かわいそうに思ったわ。
一方のわたくしはというと一学期、二学期、三学期、と休みに入るたびに帰省していました。東京から福井まで毎回。
三等車で帰っていたけれど一度だけ、二等車に乗って帰ったことがあるのよ。
一等車は皇族の方々が乗られるところで、二等車は今でいうところのグリーン車ね。普通車にあたるのが三等車、という区分けになっていたの。
三等車は汽車の側面に赤い線が引いてあるのだけれど、
二等車は青色の線だから一目ですぐ分かるのよ。二等車はね、座る椅子から何から違うの。
三等車は三人掛けだけれど、二等車は二人掛けだし、売りにくるお弁当も質が良くて。なにせお金持ちしか乗らない車両だもの。
二等車に乗って帰ったときは、父にたいそう怒られました。
親も乗ったことないのに学生の身で、ってね。
当然といえば当然だけれど、学割制があったからちょっとは安かったし、何事も経験だからとつっぱってみたりもしていました。
《二等車に乗って帰って大目玉》

H29.04.10号より