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続・わたくしの宝もの 33_お弁当大作戦
新入生の姿がまぶしいこの頃ね。希望にあふれていてなんとも輝かしいわ。
最近のお子さんは給食をあまり食べないって聞くけど、残念なことね。
しっかり食べて身体の基礎を作らないといけません。食べたいものが食べられる良い時代になったのですから。
わたくしの小学校時代は給食がなくて、皆、お弁当だったの。
黄色のアルマイト製のお弁当箱だったかしら。大好きな梅干しをたくさん入れて
もらってね。おかずはお豆とか大根の煮たのとか。
お弁当の時間になると、お小遣いさんが温かいお茶を配ってくれるのよ。
しかし、毎日毎日お弁当でしょ。
作ってくれるのは本当にありがたいのだけれど、
クラスメイトがパンを食べたりしていて、それがたいそうおいしそうなの。
わたくしはどうしてもパンが食べたくなって、親に直訴してみたのだけれど、
首を縦に振ってくれません。お弁当なら夕飯の残り物ですむけれど、
パンを買うにはお金がかかるからぜいたく品なのよ。
それでもやっぱりパンが食べたい。
わたくしはある日、作戦を決行することにしました。
お弁当をわざと忘れて出かけたのです。
これならパンを買っても仕方ないって、言ってくれると思って午前中の授業は気もそぞろに受けていました。
しばらくすると、学校に父の姿が見えました。
なんとお弁当を届けにきてくれたのです。
それもいつものお弁当箱じゃなくて、漆塗りのお重で。立派すぎてそれはもう恥ずかしくて、恥ずかしくてね。
一大作戦は丸つぶれ。父にすべてお見通しだったのね。
パンを食べられなかった悔しさも相まって、生涯で一番、苦いお弁当の味になりました。
《アンパンジャムパンクリームパン》

H29.04.24号より