続・わたくしの宝もの 34_べっぴんさん


昨日は母の日だったわね。皆さんは感謝の気持ちを示せたかしら。

わたくしも心の中で母に想いを馳せました。

母との思い出はいくつもあるのだけれど、食べ物と結びついているのが多いかしら。

お重箱に流し込んだ母手作りの水ようかんのおいしかったこと。

学校帰りのおやつに、アツアツの蒸したサツマイモを用意してくれていたこと。

当時では珍しい〝洋菓子〟を目当てに、街の真ん中の「松岡軒」に連れていってくれたこと。

その「松岡軒」は、真っ白な前掛けをしたおばさまが出迎えてくれるモダンなお菓子屋さんでね。デコレーションケーキを初めて見たのもこちらのお店でした。

夕ごはんを食べたあと、きょうだい7人でぞろぞろ連れ立って向かったの。

父は呑むほうが良いからお留守番ね。

カステラや、クリームが入ったケーキやら、そういうものをいただきました。

わたくしの母は、今でも福井にある大きなお弁当屋さんの一人娘で、女学校を出ています。7人も出産して、わたくしは確か、母が19歳だか20歳の時の子どもだったそうよ。

若い頃はべっぴんさんとして評判で、なんとか小町とか言われたとかどうとか。

親戚に、横浜で修業したという写真屋さんがあって、

そちらの店頭に子どもの頃の母の写真が飾ってあったのだけれど、

その写真を欲しいって方があとからあとから出てきたってはなしよ。

その写真、わたくしもいっぺん見たことがあるけれど、髪の長い可愛いらしい女の子が、懐中時計にそっと耳を寄せて、時を刻む音を聞いているポーズを撮影したものなの。

わたくしは父に似たらしいのだけれど、母に似ていたら人生、どんなことになっていたかしら、って思ったりもするわね。

《コチコチと 針の鼓動と 少女の笑顔》

松岡軒にまた行ってみたいわ

H29.05.015号より


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