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続・わたくしの宝もの 37_見抜かれた仮病


健康診断の季節のようね。

みなさん働き盛りでしょうから、くれぐれも身体をお気づかいください。

わたくしが健康診断を受けるようになったのは、この会社に入ってから。

娘時代はいたって健康に過ごせていたわ。

なにせ7人きょうだいで親は一人ひとりに構ってられないでしょう。風邪をひく暇だってなかったのよ。

小学2年の夏だったかしら。

母の実家から地域のお祭りに招かれたとき、先生に「頭が痛いです」といって早帰りしたことがあったのね。

急いで家に帰ったのだけれど、母はわたくしの顔を見るや否や、

「すぐ学校に戻りなさい」って。物の見事に仮病は見透かされていたわけ。

頭が痛いって神妙にしていても子どもだもの、嘘をつき通すのは無理だわね。

そのお祭りというのは、福井では名高い神明神社のお祭りです。

お神輿や山車も出て賑やかで盛況なの。

わたくしは仮病を使ってしまうくらい毎年、そのお祭りに行くのが楽しみで仕方なくてね。学校終わりに、きょうだい集まって人力車で向かうのよ。

お祭りを見学しながら、屋台で売っている綿あめがおいしそうだなあと思うけれど、母の実家、つまりわたくしの祖母の家ではたくさんのごちそうを作って孫たちの訪問を心待ちにしていますからじっと我慢の子。

祖母の家では、子ども用のちいさな懐石のようなお膳が用意されていて、飲み物はビン入りサイダーでした。

どれを食べてもおいしくて、サイダーの味も贅沢で。お小遣いもくれるのよ。

お客様だからと、たいそうなもてなしをしてくれました。

自宅へはタクシーで戻るのが通例でした。

めったに乗れない乗り物でしたから心が弾んだことも覚えています。

《ごちそう その上お小遣い 心ふところ 大満足の夏の夜》

夏でも温かいお茶を飲みます

H29.07.03号より


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