続・わたくしの宝もの 40 番外編_お悩み相談3
コラムをひと休みして夏休み特別企画・お悩み相談をお送りします。
100歳ならではの視点、というよりも辰巳志な子独特の感性でほどよく向きあい、答えを紡ぎだします。
◇ ◇ ◇
問い:我が家の息子(5歳)は落ち着きがありません。どう躾ければ良いですか?
答え:難しい問題ですね。わたくしの長男もきかん坊だったけれど、
自転車を買い与えたら夢中になって集中していたことを思い出しました。
そうそう、以前お話ししたわたくしの弟もお勉強が苦手で親を悩ませていたのよね。
でも絵を描かせたら展覧会に出るほどだったから、そこを伸ばしてあげたのよ。
得意なものをみつけてあげれば腰を据えて取り組むようになるんじゃないかしら。
相談者の方のお子さんのことを考えていたら、ある男の子のことを思い出しました。わたくしの幼稚園時代の教え子、Dくんです。
Dくんは、お醤油屋さんのご子息で、幼稚園バッグの代わりに布製の醤油袋を持って通園してくる可愛い子です。
ありがたいことにわたくしをたいそう好いてくれて、とても仲良く過ごしました。幼稚園がお休みの日曜日もわたくしのところへ遊びにくるくらいだったのよ。
そうしているうち、わたくしが中国へ渡るために幼稚園を辞めることになりました。
きちんとお別れの挨拶をしたのだけれど、幼稚園児だものね、そんなこと、理解できるはずもないわよね。わたくしが去った下宿の玄関に毎日来ては、そこにじっと座っていたと伝え聞きました。
「吉野先生、まだ帰んならんか」って言いながら。
どうにもしようがないけれど、胸が締め付けられるような思いになったことを今でも思い出します。
あれから戦争もあって皆、あちこち散らばってしまったから、
日本に戻ってきても会うことはできませんでした。純粋で真っすぐなDくん。
今でもわたくしのこと、覚えてくれているかしら。
※会長の旧姓は吉野といいます
《得意をみつけ 伸ばしていたら あっという間に中学生》

バッグを掛けて自宅へ帰ります
H29.08.14号より